乳腺症
- 最も多く見られる乳腺の病気で、30~50代の女性に多い。
- 症状: 乳房痛、張り感、違和感、しこり、乳頭分泌など。
- 原因: 生理周期、更年期のホルモンバランスの乱れ、肩こり、リンパ浮腫、高脂肪食、喫煙など。
- 対策: 肩のほぐし、運動、ダイエット、禁煙、ヨガ、ラジオ体操など。
- 治療: 鎮痛薬、漢方薬、エクオールの使用。
〇乳腺症とは日常診療で最も多くみられる乳腺の病気です。30-50代の女性に多く、症状は、乳房痛、乳房の張り感、違和感、しこり、乳頭分泌など様々ですので、まずは乳がんでないことを検査して調べる必要があります。
乳腺症の原因は多彩です。生理周期に一致する乳腺症は生理痛のひとつとして考えられます。また更年期にみられるホルモンバランスの乱れのほかに、肩こり、リンパ浮腫、高脂肪食、喫煙が原因に挙げられます。パソコンやスマホの見すぎでストレートネックになっていませんか。また「最近体重が増えた!」という心当たりはありませんか?皮下脂肪が増加するとすぐにリンパ流の停滞を起こし、脇の痛みや乳腺の痛みになるようです。以上は私の患者さんの実体験に基づきます。肩をほぐす、運動をして体内に酸素を取り込む、ダイエットをする(高脂肪食を摂取しない)、禁煙をことで痛みが治まることがあります。そのため、ヨガなどストレッチ・体操で良くなることもあります。私はすべての人に朝起きたらNHKラジオ体操をすることをお勧めしています。ラジオ体操の有酸素運動量は高く効果的です。そのうえで鎮痛薬、漢方薬などを処方しエクオールを試してもらっています。
線維腺腫(良性腫瘍)
- 若い女性に最も多い良性腫瘍。
- 症状: 痛みのないしこりとして自覚され、触診でコロコロと動くしこり。
- 診断: 定期検査で大きさを確認。
- 治療: 3cm以上に増大する場合は手術を検討。
〇20~30代の女性にもっとも多い良性腫瘍です。症状は痛みのないしこりとして自覚します。触診ではコロコロとよく動くしこりをして触れることがあります。小さいものは検診で発見されることもあります。若い女性の20%程度にあると言われています。線維腺腫の多くはゆっくりと増大する傾向にあり径2-3cmほどの大きさで止まることが多いです。線維腺腫と診断されれば治療は不要ですが、葉状腫瘍との鑑別が難しい場合や3㎝以上に増大を認める場合は手術で摘出することを検討します。線維腺腫の場合は、年1-2回は定期検査をして大きさを確認する必要があります。
葉状腫瘍(良性~境界悪性~悪性腫瘍)
- 20~30代の女性に見られる腫瘍で、線維腺腫とよく似ているが急速に増大することがある。
- 診断: 針生検を行い、良性、境界悪性、悪性の3つに分類。
- 治療: 手術が根治を目指せる唯一の治療であり、3cm以上に増大する場合は手術を推奨。
〇葉状腫瘍は線維腺腫と同様に、乳腺組織の上皮成分と間質成分の増殖が見られる腫瘍で、線維腺腫よりも急速増大することがあります。30-40代の女性に見られます。線維腺腫とよく似ているため、針生検を行って病理診断をします。葉状腫瘍は、病理学的に良性、境界悪性、悪性の3つに分類されます。葉状腫瘍は手術が根治を目指せる唯一の治療であり、良性であっても3㎝以上の増大を認める場合は手術をお勧めします。
乳腺のう胞(良性病変)
- 若い女性に多い疾患で、リンパ液が溜まり水風船のような袋を作る現象。
- 生理周期によって硬く触れたり、柔らかくなったりする。
- 診断: 画像診断や針生検による病理診断が必要な場合がある。
〇人間の体の中では肝臓や腎臓などの正常組織の一部にリンパ液がたまり水風船のような袋を作ることがあります。乳腺のう胞も同様に乳管の一部にリンパ液が溜まる現象です。若い女性に多い疾患の一つですが、女性ホルモンによって伸縮しますので、生理周期によって硬く触れたり、柔らかくなったりします。乳がんや乳管内乳頭腫など、のう胞を形成する腫瘍もありますので、画像診断のほか針生検による病理診断を必要とする場合があります。
異型乳管過形成(境界病変)
- 境界病変のひとつです。
- 乳腺症や乳がんと同じような画像所見を示すことがあります。
- 定期的フォローアップをする又は外科切除を考慮する場合があります。
〇乳腺症の一部になりますが、病理診断で乳腺組織の増殖性病変や異形成病変を指摘された場合は乳がんの発症リスクと考えられていますので注意が必要です。低悪性度の非浸潤性乳管癌(DCIS)の周辺病変をみている可能性があるので、針生検を追加する、又は外科的に切除することもあります。
乳管内乳頭腫(良性腫瘍)
- 乳管が風船のように袋状に拡張した良性病変です。
- 20-40代の女性に見られます。
- 乳頭から赤い分泌液が出ることで気づくことが多いです。
〇乳管がのう胞状に拡張し乳管内で血液の豊富な乳頭腫と呼ばれる良性腫瘍が増生して乳管内乳頭腫を形成します。のう胞内乳頭がんもありますので、針生検で鑑別が必要です。
乳頭部腺腫(良性腫瘍)
- 乳首のすぐ下にできる良性腫瘍です。
- 20-30代の女性に見られます
- 乳頭の下にしこりを自覚して気づくことが多いです。
〇乳頭上皮細胞が乳頭状、充実性に増生する良性腫瘍です。一見、乳がんの浸潤巣のように見えるため、はやり針生検による診断が必要です。
過誤腫(良性腫瘍)
- 脂肪組織などが増生する良性腫瘍です。
- 柔らかく触れます。
- 一般的に手術適応ではなく経過観察をします。
〇乳腺の内部に脂肪組織が増生して腫瘍を形成します。腺脂肪腫と呼ばれることがあります。エコーでは腫瘤として見えますが、柔らかく触れます。針生検で過誤腫と診断された場合は一般的に手術の適応ではなく、エコーなどで経過観察をします。
さまざまな乳腺炎(乳腺の炎症)
乳腺膿瘍(化膿性乳腺炎)
- 乳房が赤く腫れ、痛みを伴います。
- 乳頭からの常在細菌の逆行性感染が考えられます。
- 抗生剤投与で経過が良くなる場合がほとんどですが、重症の場合は外科的に切開排膿をします。
〇片方の乳房がだんだん赤く腫れて、痛みを伴って気づくことがあります。原因として乳頭からの常在菌の逆行性感染であることが多いです。ストレスの多い方、喫煙する方、糖尿病をお持ちの方になりやすいと知られています。抗生剤投与で経過が良くなる場合がほとんどですが、重症の場合は外科的に膿を外に出すことで、症状は軽快します。ドレーンを留置することもあります。

肉芽腫性乳腺炎(非化膿性乳腺炎)
- 硬い硬結、皮膚赤みなど乳がんに似た症状を呈します。
- 針生検による組織診断で診断できます
- 抗生剤やステロイド内服で炎症が治まるまで様子をみます。治癒までに時間がかかることが多いです。
〇肉芽腫性乳腺炎とは乳腺に慢性的な炎症が起こり乳房内に腫瘤を形成したり、赤みを伴ったりする病気です。原因は、細菌感染やアレルギー、自己免疫疾患など考えられています。針生検により病理学的に診断が可能ですが、抗生剤やステロイド内服で炎症が治まるまで粘り強く治療を続ける必要があります。治癒するまで数か月~1年の長期になる場合もあります。関節痛や皮膚赤斑など伴う場合もありますので、全身症状の観察が必要です。
授乳期乳腺炎
- 授乳期女性に多い乳房の赤み・痛みで気づくことが多いです。
- 乳汁うっ滞により乳房が腫脹し、高い熱や悪寒を伴うことがあります
- まず搾乳をしてもらいますが、乳汁うっ滞が続く場合は外科的に切開排膿します。
〇授乳中にお乳が出にくい乳房は乳汁うっ滞を起こしやすく、その後細菌感染により高い熱や悪寒を伴うことがあります。搾乳や抗生剤投与で良くなることもありますが、良くならない場合は外科的に膿を外に出してあげる必要があります。ドレーンを留置することもあります。
女性化乳房症
女性化乳房とは、男性の乳頭下にしこりや痛みを起こすことです。10-20代の若い男性の場合、男性ホルモンが増えることが原因と考えられます。また60代以降の男性にも起こりやすく、喫煙や服用している薬により誘発されると考えられています。自然消退することが多いですが、男性乳がんとの鑑別のために針生検を施行することもあります。
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