乳がんの治療と「生体機能イメージング」って何?

🔶 乳がんの治療に役立つ新しい「見える化」の技術とは?

がん治療では、「がんが小さくなったかどうか」で効果を判断してきましたが、それには時間がかかります。そこで、がんの血流や酸素の状態などをリアルタイムで見る「生体機能イメージング」という方法が注目されています。

🔶 どんなことがわかるの?

がんは成長すると周りの血管から酸素や栄養を引き込もうとしますが、その血管は弱くてうまく働かず、がんの内部は酸素が少なくなります(=低酸素)。この状態だと治療が効きにくく、がんが転移しやすくなります。腫瘍血管イメージ(図・下)

でも、ある抗がん剤を使うと、がんの血管が「作り直されて」酸素の流れがよくなり、治療が効きやすくなるということがわかってきました。

🔶 どんな検査で見えるの?

以下のような最新の画像検査を組み合わせて使います:図1

検査名わかること
FDG-PET/CTがんがどれだけ「糖」を使ってるか(=活動の激しさ)
FMISO-PET/CTがんの中の酸素不足の程度
DCE-MRI血管の様子や血流
DOSIがんの酸素状態や血液の流れをレーザーでチェック

🔶 治療と画像の関係は?

  • 図2A:乳がんの種類によって酸素化の乏しい乳がん(低酸素乳がん)と酸素化の豊富な乳がんがあります。
  • 抗がん剤には低酸素を解除して治療効果を引き出す力があります。
  • 治療を始めた数日後でも、画像で血管の変化や酸素状態の改善がわかります。
  • 図2B:特にベバシズマブ(血管を正常にする薬・一般名:アバスチン)は、うまくいくと酸素が行き渡るようになって治療効果アップします。
  • でも合わない人もいて、逆に血管が壊れてがんが悪くなるリスクもあります。

🔶 FDG-PET/CTは低酸素を視覚化できる!?

  • がんの糖代謝を視覚化するFDG-PET/CTは腫瘍内の低酸素を反映している可能性があります。
  • 図3:抗がん剤の治療効果の高い腫瘍はFDG-PET/CTによるSUV低下が著明ですが、こうした乳がんは低酸素がなくなり、酸素状態が改善しています。

🔶 今後の展望は?

  • 画像検査の結果をもとに、「この薬が効くかどうか」を早めに判断できるようにして、無駄な治療を避けるような未来の治療法(オーダーメイド治療)が進んでいます。
  • 特にFDG-PET/CTはその中心として使われ始めています。
  • 図4:イメージングの研究から、血管新生阻害薬(ベバシズマブ)には治療効果の高い乳がんとそうでない乳がんがあることが分かりました。そして治療効果の高くない乳がんは低酸素を悪化させるためすぐにやめた方がよい場合もあります。これからはがん細胞だけでなく、血管内皮細胞、線維芽細胞やマクロファージなど支持細胞をターゲットとする治療薬の開発が進んでいくでしょう。こうした治療は腫瘍内の低酸素解除が重要な要素になります。

🌟まとめ

乳がん治療は、「がんの大きさ」だけでなく、がんの中で何が起きているかを見ることが大切になっています。
最新の画像検査でそれが「見える」ようになり、一人ひとりに合った治療を選べる時代が近づいています。



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